北へ

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 いや、もともとはそれほど苛烈な性格ではないのかもしれない。  泣き寝入りをするタイプではないようだが、攻撃してくる人間がいなければ穏やかな生活を好む性質らしいというのはなんとなくわかってきた。  母ジークリンデとも仲良くやってくれているようでありがたい。  父の側妃がいなくなって、ようやく落ち着いたと思えばアラベラがやって来た。  王宮の女主人のようにふるまうアラベラは母の心労になっているだろう。  リアーナとはそれなりにうまくやっているようだが、リアーナではアラベラを黙らせられない。  ヴィオレーヌが正妃になると聞いたとき、彼女もアラベラのように母の負担になるのではと危惧していたが、蓋を開けてみれば意外にも王宮の調和を乱さないいい嫁だった。  ついでにアラベラをうまくやり込めてくれるので、以前よりも居心地がよく感じる。  加えて、剣を持たせれば一流の騎士並み、魔術は禁術まで操れるレベルで、さらに聖魔術まで使える。  出発してすぐに、お守りだと言ってポーションを一本もらったことにも驚いた。  ヴィオレーヌがくれたポーションは、普通のポーションとは違う特別製らしい。
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