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再び戦が起こるだろう。
少なくとも、モルディア国の父と義母、そして弟たちは激怒する。
同盟国マグドネル国がどう動くかはわからないが、ここでヴィオレーヌを殺害するのだ、ルーファスの狙いは、これを皮切りに再び戦を起こすことである可能性もあった。
そうなれば、小国であるモルディア国は壊滅するかもしれない。
父や義母、弟たち、国民……。ヴィオレーヌが愛し、そして愛してくれた大切な人たちの命が奪われる。
そう思うと、凪いでいた心に、怒りの感情が沸き起こった。
けれどやはりどうすることもできず。
ヴィオレーヌは彼女を嘲笑う男の手によって、命を落とした――はずだったのだ。
☆
体を斬りつけられた激痛も一瞬のことで。
ハッと目を覚ますと、見覚えのある場所だった。
いったいどうなっているのだろうかと、起き上がろうとしても起き上がれない。
言葉を発しようとしても「あ、ぅ」という赤子のような声しか出ず、ヴィオレーヌは駆けつけてきた人物を見てギョッとした。
それは、ヴィオレーヌがよく知る乳母だった。
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