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父は魔術の才能はからっきしだが、母が大魔術師だったのだ。ヴィオレーヌにも魔術が使えるかもしれない。
(魔術師は魔力がないと無理だって聞いたけど……、魔力ってなんなのかしら?)
魔力というのは正直よくわからない。
その正体が何なのかは、いまだに解明されていないからだ。
ただ、人の中には稀に魔力を持って生まれるものがいて、それらがその力を制御する術を学んで魔術師になる。
ベビーベッドの上で手足をばたばたさせながら考える。
母が生きていたら魔術についていろいろ聞けたのに、それができないなら仕方がない。
予定では父はこの二年後に後妻を娶るけれど、義母は魔術師ではなかったので、情報を得るのは不可能だ。
そして困ったことに、記憶通りだと、父は母がヴィオレーヌを生んで死んだのは、魔術師だったからだと思っている。
力の強い魔術師は、子を生む際に体に負荷がかかるのだとか、どこで仕入れてきた情報なのかは知らないが、父はそう信じていて、娘に母と同じ魔術師の道を歩ませようとはしなかった。
魔術に興味を持たないように、ヴィオレーヌの周りからは徹底して魔術師が排されていたのだ。
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