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その声と、電話越しでも伝わる緊張感で、真面目なトーンに変わったのが分かる。
自分の結婚報告という目出度い電話でいったい何を言い出すかと、こちらまで緊張していると、
「お前、本気で気付いてなかったみたいだけどさ、俺はずっとお前が好きだった。あんな束縛野郎から奪い取りたいくらい、好きだったよ」
突然の告白に、やはり酔っているのだな。と思わず笑いながら、
「結婚決まった男がそんな冗談言うなよなぁ」と茶化してしまったけれど、電話の向こうにはフザけた空気は微塵もない。
えっ?嘘だよね?だって・・。
「だって、秀明はずっと波美を好きで…」と言い返すと、いともあっさり
「そんなの、お前との時間を作る為の口実に決まってんだろ。」
私との時間て。
大体は波美を含めた数人で面白可笑しく遊びに行っていただけで、波美を理由に秀明と二人で過ごしたことなんて数える程度しかない。
「お前さ、俺たちの前で、彼氏の束縛がキツいとか文句言う割には別れる気配ないし。そのくせ俺らと一緒に遊んでいるほうが楽しそうにしてるし?まぁ勝手だけど、俺はちょっと期待してたんだよ」
だから、もしかしたら社会人になったら、俺にもワンチャンあるんじゃないかと思ってた。
「でも、お前ら結局別れないし。諦めをつけようと、職場で俺に告ってくれた彼女と付き合い始めたらお前ら別れちゃうし。つくづくお前とは縁が無いんだと思い知らされたよ。」
でも、やっぱりお前にちゃんと伝えられなかったことが引っ掛かって、彼女との結婚に踏み切れなかった。
「今夜、この電話でお前が出なかったら、彼女との結婚は考え直そうと思ってた。でも、こんな時ばっかりすんなり繋がっちゃうんだもんな。ホント、お前とは縁がないんだなぁとあらためて思い知らされたよ。でも、俺の気持ちをちゃんと伝えることが出来て良かった。彼女と結婚の話進められるわ」
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