37人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
リュリュに心配かけないように、ちゃんとしないと。
わかっているのに、自分に何度言い聞かせても、上手く笑えない。
……生きたいと思うことは、人として間違っていないはずだ。
そのための手段を思いついたなら、誰だって実行しようと思うだろう。
だからわたしは、人として当たり前の感情に沿って行動しただけなのだ。
そう何度も自分に言い聞かせて、視察に行く以前の自分に戻ろうとするけれど、どうしたって戻れない。
「食欲がないなら、お庭にお散歩に行って来たらどうですか? ここ数日、ポポとも会っていないでしょう? 今まで二日と開けずに会いに来ていた花嫁様が来ないって、ポポが淋しがっていましたよ」
「そう、ね」
庭を歩けば、少しは気分転換になるだろうか。
でも、これまでのようにポポを撫でまわして無邪気に笑える自信が、どこにもない。
わたしはふらふらと立ち上がり、部屋から出る。途端に見つけた、廊下の壁に貼られている矢印に泣きそうになった。
こんな身勝手なわたしのために貼られた庭までの案内。わたしが迷子にならないようにと、クラヴィスが用意してくれたもの。
最初のコメントを投稿しよう!