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約束
「あ、あの子来ましたよ」
「めっちゃ、こっち見とる」
「斜め下四十五度から見上げてくるの可愛い。来年も来てくれるかのー」
「来てくれるといいですねぇ」
「お待たせ、叔母さん」
「ずいぶん長くお祈りしてたわね」
「来年受験だからね」
「県外へ行くの?」
「ううん。第一希望はこっちの大学。第二希望が県外だから。無事受かって来年も再来年も会いに来れますようにってお願いしていたの」
「貴女が会いに行く方なのね」
「会いに来てくれることはまずないかな」
叔母は首を傾げるが娘は気にもしない。軽い足取りで鳥居の下を通り抜けるとそこでぴたりと立ち止まる。振り返ると広い参道の行き止まりに赤い朱塗りの社殿が見える。
「またね、神さま」
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