夜の帳が下りる頃

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「今日はここ、クラブ(れん)だね。3人とも行ったことある?」 「私はないです」 「私も」 「あ、私一回行ったことあるので、なんとなく場所も覚えてます」 「良かった、じゃありんは二人を案内しながら行ってね。頼んだよ、先輩!」 「わかりました」 「今日のシフトは23時30分までだから、終電間に合うようにしっかり切り上げてきてね。じゃ、行ってらっしゃ〜い!」 りんさん、ミカさんと一緒にオフィスを出発した。この時持って行けるものは、ライターとハンカチのみで、スマホは持っていけない。 「二人とも、道こっち。ついてきてね」 「はい、りんさん、ミカさん、今日は宜しくお願いします」 「こちらこそ」 到着するまでの5分くらいの間、歩きながら3人で他愛もない話をする。 「お二人とも結構長いんですか?」 「私は今の事務所、まだ3ヶ月くらいですね。りんさん長いんですか?」 「私は1年くらいかな。そこまで古参じゃないわね。あ、ちなみに私何才に見える?」 「うーん、肌つやつやですけど、大人の落ち着きもありますし、30才くらいですか?」 「ふふ、実は40才なの」 「「えぇ!?」」 ミカさんと私は驚きのあまり、つい大きな声を出してしまった。お肌もつやつやの卵肌で、これで本当に40才だったら凄い。努力の賜物だ。 私は27才、ミカさんは23才だが、りんさんの「奇跡の40才」に関しては、今日一番の驚きだった。 ホステスを辞めようと思った理由に「年齢」もあったのだが、りんさんを前にすると、それすらも言い訳に感じてしまう。 *** ーーカランカラン 「いらっしゃいませ……あら、派遣の子達ね。今日は宜しくお願いします。クラブ恋のママ、千夏です。金曜でかなりお客様が入ってて、早速あそこの席に行ってもらっても良いかしら? 分からないことはいつでも聞いてね」 「「「宜しくお願いします」」」
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