加速するヤキモチ 〜side拓〜※

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「亮、お前も飲み過ぎだ。明日休みだからって、もうやめておけ」 「まぁまぁ、兄さん! 接待とか会食だとこんなに飲めないし、今日くらい許してよっ」 「仕方ないなぁ。適当に買ってくるから、少し休んでろよ」 「はーい、行ってらっしゃい」 俺は急いで、マンションのすぐ近くにあるコンビニに向かった。度数が低めのナチュラルワインと、他にもお酒を数種、あと念のためウコンのドリンクも買っておいた。 それにしても、美月と俺は飲んでばかりだな。2人とも酒好きだから、仕方がないが……。 マンションに戻ると、2人の声がせず静かだった。もう寝たのか?と思ってリビングを覗き込む。 美月は酔っ払って寝落ちしたようで、亮に寄りかかって寝ていた。隣にいたのが俺だと勘違いしたのかもしれない。 そして、美月を見る亮の顔を見て、俺は時が止まったかのように感じた。 美月の寝顔を愛おしそうに見る亮の顔は、特別なものを見ている人間の顔だ。俺は気付いてしまった。 ーーー亮は、美月のことを好きになり始めているんだと。 そう気付いてしまったら、俺の中で何かが「ブチッ」と切れるような音がした。 どうしても、美月だけは渡せないんだ。 「おい、亮」 「あ、兄さん、お帰り。美月、飲み過ぎて寝ちゃったんだけど、寝室まで運べる? 俺ももう寝たいし」 「亮、今日はもう帰れ」 「は? 今から? もう結構酒飲んじゃったし、終電もないんだけど。急にどうしたの?」 「お前、美月のこと好きだろ」 「は、兄さんどうしたの? こいつのこと好きになる訳ないじゃん……」
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