夜の帳が下りる頃

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初めて来たクラブ(れん)は、広々としたフロアに、カウンター席も併設されている。ギラギラとしたシャンデリアもなく、間接照明が中心で、内装も白を基調にした綺麗な印象だ。ママの着物も白を基調にした物だった。 フロア内は既にお客様で席が埋まり始めていて、お酒を飲みながらホステスと談笑していた。 私たち3人もそれぞれの席について、接客を始める。たまたま、りんさんと同じグループのお客様を対応することになった。 「いらっしゃいませ、ナナです。宜しくお願いします」 「ナナちゃん、宜しくね〜 いつも見ない顔だね。出勤、何回目?」 「実は今日が初出勤なんです! まだ慣れてなくて、緊張してます」 「あはは、可愛いね。俺は恋の常連だからね、色々教えてあげるよ。あ、これ俺の名刺渡しておくね」 「ありがとうございます。すみません、今日初日で私は名刺がなくて」 「良いよ良いよ、ほら、乾杯しよう」 りんさんと私が新たに加わったので、改めて乾杯をした。今挨拶をした田中さんは某大手自動車メーカーの役員で、今日は自身の部下と取引先の方を伴っての来店だった。 ホステスからお客様のお仕事について聞くのはNG、というのが暗黙の了解ではあるが、田中さん自ら仕事の話を振ってくれたので、失礼にならない範囲で受け答えに徹した。 その後話は変わり、年齢について聞かれる。 「ナナちゃん、今いくつなの?」 「何才に見えますか?」 「うーん、そうだな、25才くらい?」 「惜しい、27才になりました!」 「そっか〜結婚とか考える年齢かな」 人にもよるのだが、「26才です」と言うと「若いね〜」と言われるのに対して、実年齢の「27才です」と言うようになってから「若いね〜」とは一度も言われたことが無かった。 この1才の差は一体なんなんだろう、とよく思った。 若ければ良いのかといえば、別にそういう訳でもない。でも、この評価に不安がないかといえば嘘だった。
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