気持ちの正体 〜side亮〜

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気持ちの正体 〜side亮〜

「お前、美月のこと好きだろ」 「お前の顔見たら、分かるよ。何年家族やってると思ってるんだ」 自宅に戻るタクシーの中で、兄から言われた言葉を思い出していた。 (俺が美月を好き……? そんなことある訳ない……だろ……?) 美月と出会った頃のことや、これまでのことを思い返した。 *** 最初は、兄が好きになった女はどんな女なのか、興味本位で近づいた。 よく兄は女性に付き纏われて困っていたし、そのせいか最近はめっきり女性関連の話を聞かなくなっていた。 見かねた父親が、アドプランの今井社長まで巻き込んで、銀座のクラブに連れて行くくらいだ。 その兄が同棲をし始めたのだから、これは本気なんだろうなと思った。でも、美月に対する第一印象は、特に何も秀でた所があるように見えなかった。 確かに顔は綺麗な方かもしれないが、背は低いし、モデル体型でもない。 (兄さんが好きになったんじゃなくて、この女が押しかけて無理やり同棲してるのか……?) そんなことまで考えてしまった。 以前、兄が女性につき纏われて困っているのを目撃したのは、もう随分前だ。 その時は「兄さん!」と、会う約束をしていたかのように助け舟を出して、その女から離れさせた。 「亮、助けてくれてありがとう。もう何度も断ってるんだけど、なかなか諦めてくれなくて。しかも最近は、俺の行きつけの店で待ち伏せしてたりするんだぞ? 笑っちゃうだろう?」 「ハハ、兄さんは優し過ぎる所があるからな」
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