気持ちの正体 〜side亮〜

2/5
前へ
/165ページ
次へ
子供の頃から、俺にとって兄はヒーローのような存在だった。特に、大学在学中に起業した時は本当に凄いなと思ったし、弟として誇らしかった。 世の中には、兄のような0から1を生み出すのが得意な起業家タイプもいれば、1から10、10から100と、既にあるものをより良くするのが得意なタイプもいる。 俺には「0から1」はできない。 そして、人は無いものねだりなのかもしれない。ただただ兄を尊敬し、憧れていた。 そんな兄が困っているなら、助けたい。俺なりの役割を見出した瞬間だった。 兄に付き纏っている女に接触し、その女が本気なのか揺さぶってみた。すると、案外すぐに諦めたし、何なら「亮くんでも良い♡」とか言い始めた。ふざけるなと思った。 兄が会社を売却した時、父と同じで「そろそろ松本に来てくれないだろうか…」とも思った。 売却当時、俺は24才で入社2年目だ。M&Aは提案から契約締結まで半年から一年かかるのがザラということもあって、コンサルタントとしてはまだ駆け出しだった。 なかなか思うように結果が出せない中、兄が上場ではないにしろ、売却という形で成功したことは本当に眩しかった。 自分が人の上に立つより、兄が上に立った方が圧倒的に良い。 それがまさか、WEB広告で有名なアドプランホールディングスで働くなんて……。 当時はまだWEB広告のイメージが強く、大手広告代理店や松本コンサルと比べても、仕事のスケールも待遇面も劣るだろうなと思っていた。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6595人が本棚に入れています
本棚に追加