気持ちの正体 〜side亮〜

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「兄さん、なんでアドプランにしたんだ? もううちの会社に来てくれても良いじゃないか」 「今井さんも困ってるみたいだし、俺も力になれそうだったからな。それに、松本には亮がいるから安心だろう?」 「他の会社やうちの会社と比べても、アドプランじゃスケールも待遇も劣るんじゃないの?」 「そうだな……でも、これまで散々今井さんにもお世話になったし、俺はスケールとか待遇よりも『』を大事にしてるから。あと、広告業界は変化が早くて、面白そうだろう? 新しい物好きな俺にはピッタリだと思うんだ」 兄はニコニコしながら言った。 無事、会社の売却も完了して、早々に前を向いて歩いている。 (というか、俺とは一緒に働きたくないってこと……? 兄に甘えてるようじゃダメってことなのか?) 兄の言葉を、歪んだ見方で受け止めてしまう。 そんな自分も嫌で、兄との接し方に戸惑い始めたのはこの頃からだ。 その後、俺なりに今の会社で圧倒的な成果を出せるようもがいてきたし、皆に認められるよう頑張ってきた。 でも、父親も自分で起業してここまで会社を大きくしたからか、同じ「起業家」として兄に一目置いていると感じていた。 俺が一人前として認められるのは、いつになるのだろう? 誰かに兄弟比較をされた訳でもないのに、自分で勝手に比較して、自分で自分の首を絞めているようだった。 そして、兄の売却から4年が経ち、兄の彼女として美月と出会った。 ***
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