6677人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
「田中さん、私は何才に見えます?」
「えー、りんちゃんは年齢不詳だよ。すごく落ち着いてるし、30くらい?」
「ふふ、実は40なんです!」
「えー?!嘘、それ本当なの?? いやぁ、信じられないなぁ」
あ、りんさん、完全に年齢をネタにしてる。
こう言う時ってみんな実はサバを読んたりしてるのかな? といつも気になっていたが、りんさんの場合は実年齢を話すタイプのようだ。
その後も「その年代だったら、カラオケでこの曲歌ったりするタイプ?」と、年齢をネタにして話が盛り上がっていた。
「ナナちゃん、次こっちのテーブルお願いできる?」
「はい、田中さん、一度失礼しますね」
千夏ママに呼ばれて、次のテーブルに移動する。既にお酒を沢山飲んでいて、出来上がってる様子だった。
グラスに水滴がつけば、紙ナプキンでサッと拭くし、お客様がタバコを吸う仕草をすれば、すぐにライターを出す(最近は電子タバコの方が多いけど)。
お酒が進めばすぐに氷とお酒を継ぎ足すし、お手洗いから戻ってきた時にはすぐにおしぼりを渡して、使用したら綺麗に畳む。
こんなことは基本の基本で、すぐに対応できて当たり前。でも……
自分の年齢
アンバランスな体型
フロアでの立ち回り
新人の派遣ホステスの子が、お店から指名をされていること
会社では田沼さんのパワハラに、今後のキャリアへの不安。色んなことが重なって、私は自信を失いかけていた。
(でも、このドレスを着ている時だけは、目の前のことだけに集中しようって頑張れるんだよね。戦闘服みたいな)
そんなことを思いながら、華金で賑わうクラブを舞台に、今日も目の前のお客様に精一杯笑顔を振り撒いていく。
***
最初のコメントを投稿しよう!