夜の帳が下りる頃

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「田中さん、私は何才に見えます?」 「えー、りんちゃんは年齢不詳だよ。すごく落ち着いてるし、30くらい?」 「ふふ、実は40なんです!」 「えー?!嘘、それ本当なの?? いやぁ、信じられないなぁ」 あ、りんさん、完全に年齢をネタにしてる。 こう言う時ってみんな実はサバを読んたりしてるのかな? といつも気になっていたが、りんさんの場合は実年齢を話すタイプのようだ。 その後も「その年代だったら、カラオケでこの曲歌ったりするタイプ?」と、年齢をネタにして話が盛り上がっていた。 「ナナちゃん、次こっちのテーブルお願いできる?」 「はい、田中さん、一度失礼しますね」 千夏ママに呼ばれて、次のテーブルに移動する。既にお酒を沢山飲んでいて、出来上がってる様子だった。 グラスに水滴がつけば、紙ナプキンでサッと拭くし、お客様がタバコを吸う仕草をすれば、すぐにライターを出す(最近は電子タバコの方が多いけど)。 お酒が進めばすぐに氷とお酒を継ぎ足すし、お手洗いから戻ってきた時にはすぐにおしぼりを渡して、使用したら綺麗に畳む。 こんなことは基本の基本で、すぐに対応できて当たり前。でも…… 自分の年齢 アンバランスな体型 フロアでの立ち回り 新人の派遣ホステスの子が、お店から指名をされていること 会社では田沼さんのパワハラに、今後のキャリアへの不安。色んなことが重なって、私は自信を失いかけていた。 (でも、このドレスを着ている時だけは、目の前のことだけに集中しようって頑張れるんだよね。戦闘服みたいな) そんなことを思いながら、華金で賑わうクラブを舞台に、今日も目の前のお客様に精一杯笑顔を振り撒いていく。 ***
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