突然の温泉旅行

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「???」 拓さんがドアに向かい、何やらホテルのスタッフと話している。何か持ってきたと思ったら…… 「美月、ちょっとフライングだけど、誕生日おめでとう」 「えぇっ!?」 なんと、ホテルにお願いして、日付が変わる直前にミニケーキとフルーツ盛り合わせを用意してくれていた。 感動してつい涙ぐんでしまう。 「拓さん、嬉しいです。うぅ……」 「美月、泣いてるの? もう可愛いなぁ。ほら、おいで」 拓さんに抱きしめられながら、幸せを噛み締める。こんなに大切にしてくれて、私は本当に幸せ者だ。 「美月、夜中だけど少し食べれる? 冷蔵庫入れておくでも良いけど」 「いえ、せっかくなので食べたいです」 「わかった、じゃあ、アーンして?」 「えっ」 とまどっていると、拓さんがフルーツをフォークに刺して口元に持ってきた。 パクッと食べると、とても満足気な顔をしている。どこまで私を甘やかしたいんだろうか……。 拓さんに食べさせられながら、あっという間に平らげてしまった。 寝る準備をして、ベッドに潜る。もちろん今日も、拓さんは寝かせてくれなかった。 *** 旅行2日目、28歳の誕生日を迎えた。 遅めに起床して、裸のまま鏡の前に立つ。 (なんか最近、拓さんすごくキスマークつけるようになったな。気のせいかな?) 自分の体をまじまじと見ながら、ちょっとした変化を感じる。この小さな違和感を、もっと理解できていれば良かったのかもしれない。 でもこの時は「拓さんの執着心が凄いのかな……」くらいにしか思っていなかった。
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