歪んだ恋心

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亮さんは結構分かりやすい人だったけれど、果林ちゃんはちょっと違う。 いつもニコニコしてるけど目の奥が笑ってないし、前に「なんなら奪っちゃおうかなぁ?」と言っていた時は目の奥が冷え切っていた。 そんな彼女を前に、私は自信を取り戻したようでいて、肝心な時に一歩が踏み出せない……。 結局、持ってきた草津土産を出すタイミングを失い、渡すのを諦めてしまった。 そして、私はさらに誤った選択をしてしまうーー。 *** この時、ふと『果林ちゃんにお土産を渡せなかったし、そのまま亮さんに渡しちゃおうかな』と思い付いた。 「今日お土産渡したいんですけど、夜少し会えますか?」 と連絡すると、「OK」とだけ返事があった。 拓さんも「今日は遅くならないはず」と言ってたし、2人きりにはならないだろう。 とはいえ、拓さんの帰宅時間もまだ分からないので、マンション集合は避けた方が良いと思い、マンション近くのファミレス集合にしておいた。 オフィスを出る直前、『亮さんにお土産を渡そうと思って、マンション近くのファミレス集合にしました。拓さんも一緒にご飯食べませんか?』と、連絡しておいた。拓さんもきっと、すぐ来るだろう。 「亮さん、お久しぶりです。元気でした?」 「あぁ、まぁいつも通り」 「……あんまり元気無さそうですね。ご飯はやめておきますか? 元々お土産を渡せればと思ってたので」 「いや、軽く食べてく」 「そうですか?」と聞いて、2人でファミレスに入っていく。食べるものを選んでいる時も、食べ始めてからも、亮さんはいつもの軽い調子ではなく口数が少なかった。 拓さんは忙しいのか、まだ返事はない。急なトラブルがあったのだろうか……。一先ずお土産のお菓子を渡してから、ファミレスを出た所で亮さんの顔を再度覗き込んだ。
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