歪んだ恋心

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「あのー本当に大丈夫ですか? 何か悩みがあるなら、聞きますけど……」 「お前なぁ……」 そう言った途端、ピタッと固まってしまった。私の首元あたりを凝視している。 「どうしました……? あ、もしかして」 (……拓さんに付けられたキスマーク、隠しきれてなかった!? は、恥ずかしい……) 「……こんなもん見せつけられて、溜まったもんじゃねぇな」 「え、何?」 亮さんの思い詰めたような顔を心配していると、突然ぐいっと腕を引っ張られた。 亮さんの腕の中にぽすんっとおさまってしまう。拓さんとはまた違う、ベルガモットのようなシトラスの香りに包まれた。 「ちょ、亮さん、何して……」 「……俺も戸惑ってんだよ」 「え、何に?」 「なんでこんなに美月が気になるのか」 「え………?」 亮さんから向けられた予想外の感情に、驚いて固まってしまう。 でも、私が好きなのは、将来を考えているのは、拓さんだ。何かを言おうとした時、突然後ろから声がした。 「……2人とも、何してるんだ!!」 「拓さん……」 私はドンっと亮さんの胸を押し返して、拓さんの方に顔を向ける。 自分から亮さんに抱きついた訳ではないのに、すぐに振り解かなかったこともあって罪悪感に襲われていた。 「拓さんあの……」 「俺が美月を抱きしめた。首についたキスマーク見て、ついカッとなった。悪い」 「亮!!」 拓さんが今にも殴りかかりそうな勢いで、亮さんに掴みかかってる。 「拓さん、やめてください!」 「……前に『美月のこと、好きになるなとは言わない。でも、まだ中途半端な想いなら、思っていることを表に出すな。それで悩むのは美月だ』って俺は言ったよな?」 今までに聞いたことのない低音で、拓さんが亮さんに問いかけている。
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