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「前のアパートはもう引き払っちゃたし、ビジネスホテルかネットカフェにでも泊まろうかな……果林ちゃんと付き合うから俺達は別れよう、って言われたら絶対立ち直れない……。
こういう時に頼れる友達もいない私って、詰んでる」
マンションの入り口の前でブツブツ言っていると、突然聞き慣れた声が聞こえてきた。
「……美月」
「え、亮さん」
「昨日の件謝りたくて会いにきたんだけど、ちょっと話せる?」
「あ、はい。今日は拓さんも遅いと思うので、大丈夫です」
マンションに入れたら、また誰に見られているかも分からない。ましてや拓さんが帰ってきたら、またショックを受けてしまいそう……。
迷っていることに気付いた亮さんが『そこまで長話しないから』と言ってくれて、近くの公園のベンチで話すことにした。
「美月、昨日はごめん。本当悪かった」
ぺこりと亮さんが頭を下げる。
「いえ、大丈夫です。ちょっとびっくりしましたけど」
「そうだよな……俺も自分の気持ちに気づいてから、これは蓋をした方が良いよなと思って、一旦美月とも距離を置こうと思ったんだ。
とはいえ、お前から会おうって言われてつい会いに行っちゃったんだけど」
そんな風に考えてたんだ、と頷きながら亮さんの話を聞く。拓さんはきっと、亮さんの気持ちにとっくに気付いていたんだろうな。
「まだ美月が特別に感じてから日も浅いし、すぐに戻れると思うんだ。だから俺は、はっきりとは気持ちは言わない。まぁ、もう言ってるようなもんだけどな」
ハハ、と自虐的な笑いを溢す。亮さんの気持ちに共感するところが少しあった。
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