歪んだ恋心

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電話の呼び出し音と重なって、亮さんの言葉が聞き取れなかったけど、ひとまず意識を電話の方に戻した。 3コールくらいで南さんは電話に出てくれた。 「南さん、お久しぶりです! 向原です」 「向原さん、久しぶりー! 私が退職して以来ね。元気にしてた?」 「はい。あのー久しぶりでこんなお願いするのも申し訳ないのですが……」 そう切り出して、これまでの経緯をかいつまんで説明していく。 「それで、もし可能であれば2、3日泊めて頂けると有難いのですが」 「もちろん!ぜひうちに来て! というかその隠し撮りしてSNSで拡散した女、本当信じられないわね!! 久しぶりに『ガス抜き会』、うちでしましょう?」 「あはは、なんだか懐かしい響きですね。それではお言葉に甘えて、この後伺いますね」 終話して、亮さんと向き合う。 「亮さん、ありがとうございます。今日水曜なので、週末まで南さんという方のお家でお世話になろうと思います」 「あぁ、それが良いな。お互い一旦離れてみて、少し頭冷やしてから向き合ったら良いさ。じゃあ、俺も兄さんに連絡するから、帰るな」 「はい、ではまた!」 私は2泊3日分の着替えを取りに、マンションに戻った。拓さんはまだ帰っていないようだったので、LIMEに連絡だけ入れておいた。 『SNSの件が落ち着くまで、前職でお世話になった南さんのお家に泊まりたいと思います。土曜には戻ります』 同じマンションで過ごさないのは2日間くらいだし、何ならオフィスでは顔を合わせるはずだ。 (万が一、拓さんが果林ちゃんに本気になったとしたら……だとしても、拓さんには私の気持ちを伝え続けたい。拓さんがそうしてくれたように)
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