守りたいもの 〜side拓〜

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守りたいもの 〜side拓〜

「あ〜〜美月不足だ……」 美月が南さんの家に泊まりに行った次の日の夜、俺は既に美月不足に陥っていた。 火曜夜は自分から「一人にしてもらっても良い?」と美月に聞いて別々で寝たし、次の日の朝、顔を合わせる前に出て行ったのも自分、その日の夜も帰りが遅くなってしまって……。 美月が顔を合わせづらくしてしまったのは、全て自分が原因なのだ。 なのに、木曜夜の時点で俺は「美月ロス」になって、参っていた。しかもそれが土曜まで続くなんて……どうしたものか、南さん家に迎えに行くか? 「まさか南さんの家が心地良くて、もうそのまま出ていくとか……いや、流石にそれは無いよな」 そんなことをぼやきながら、俺はリビングのソファにドスッと腰を下ろした。 美月と同棲を始める時に引っ越したこの部屋が、今は寒々とした空間に感じる。 俺は一昨日、昨日と、2日続けて三木谷果林と話したことを思い出していたーー。 *** 「あのっ 松本さん!!」 「はい?」 突然呼ばれたので後ろを振り向くと、受付の三木谷果林が立っていた。 (あぁ、美月が言っていた銀座の子か。というか、前に銀座で見た時と印象が変わらないな) 銀座の時と同じように、今日もバッチリメイクをしている。受付は確かに会社の顔だが、もう少し控えめにした方が良いんじゃ無いか? じっと見られたことに何を勘違いしたのか、突然頬を赤く染めた。 「あの、そんなにじっと見られると、緊張しちゃいます……」 「あぁ、悪い。それで、何の用だ?」
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