守りたいもの 〜side拓〜

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俺なりに冷たく突き放す。そうした所でこの手のタイプは、俺が距離を取っていることに気づきもしないが。 「あの、松本さんと仲良くなりたくて。ぜひ、ご飯に一緒に行きませんか? これ、連絡先です!!」 突然、連絡先が書かれた紙を渡された。いつもだったら絶対に受け取らないが、コイツは美月に危害を与える可能性もあると判断して、あえて連絡先を受け取ることにした。 「あぁ、ありがとう。あとで連絡するよ」 「嬉しい!ありがとうございます!!お待ちしていますね!」 ぱぁぁっと顔を綻ばせて、すごく喜んでいる。そんなに連絡先を受け取ってもらえたことが嬉しいのか。 その後は仕事で急なトラブルも発生して、美月からの連絡に気付くのも遅くなってしまった。 『亮さんにもお土産を渡そうと思って、マンション近くのファミレス集合にしました。拓さんも一緒にご飯食べませんか?』 「……は? 亮と会う?」 美月から連絡が来た時間を見ると、もう一時間以上経っていた。ご飯も食べ終わっている頃だろう。 俺は一目散でオフィスを飛び出した。 やっと着いたと思ったら、目の前には彼女を抱きしめる弟の姿で。 言葉を失ったが、ここで声をかけないと亮はそれ以上の事をしてしまうんじゃないかと思った。 「……2人とも、何してるんだ!!」 そして亮から返ってきた言葉に、ついカッとなって胸ぐらを掴んでしまった。 まさかこの時の様子を写真に撮られているとは思いもしなかった。 この時は美月にこんな姿を見せてしまったこと、亮と2人で会っていたことなど、ショックが重なって周りを見ている余裕が無かった。
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