守りたいもの 〜side拓〜

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俺も美月に対してグイグイ攻めてしまったが、同じように感じさせていたのだろうか? 結局、目的のレストランに到着するまで、ガシッと腕をホールドされたままだった。 レストランに入り、とりあえず何品か注文する。 あまり酒を飲む気分では無かったが、「松本さん、飲みましょう!!」と猛プッシュされて仕方なくワインを頼むことにした。 「松本さんと2人きりでご飯に行けるなんて、夢のようです〜」 「そう? 三木谷さんだったら、一緒にご飯行ってくれる人なんていっぱいいるでしょ」 「え〜そんなことないですよ! モテたい人にモテないと、意味ないじゃないですか!」 (前に俺が美月に言ったことと、全く同じことを言ってるな……俺、コイツと同類なのか?) 「……まぁ、他に食べたいものがあったら適当に頼んで。俺も適当に頼むし」 「ありがとうございます!! そうだ、私なんで松本さんと仲良くなりたいと思ったかというと……」 そう言って、俺が聞いていないのに「松本さんのここがかっこいい」「この若さで課長職はすごい」とか、過去に銀座で会ったことを話にあげて「あの時もここがかっこいいと思っていた」とか、「昔起業してたこともネットでインタビュー記事を見て凄いと思ってました!」とか、ひたすら褒めていた。 最後には「松本さんに会いたくて、転職してきたんです!!」と、鼻息荒く力説していた。 (俺も美月に会いたくて出向したし、やってることはコイツと同じか……。俺はやっぱり同類なんだな……) こんな時でも考えるのは、美月のことばかりで。三木谷果林の話はずっと上の空で聞いていたと思う。
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