守りたいもの 〜side拓〜

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「俺も今回の件に関しては被害者なんで、かなり調べたんですよ。リポストした人の中に、三木谷さんも見つけたんですけど……三木谷さんってインフルエンサーっぽい活動もしてるんですね?」 「そんな……それは、私が犯人だと言っているんですか!?」 「いえ、違いますよ。たまたま見つけたというだけで、他にも拡散した社員はいると思いますし。  ただ、その投稿主がもしこれ以上掻き回すようなことがあれば、俺もはしようかなと思ってるんですよね」 ニコッと笑顔で言い放った。三木谷果林は、少し浅く呼吸して青白くなっていた。 「そ、それ相応の対応、と言うのは……?」 「そうだなぁ。まず顔にモザイクもかかってないし、俺と亮だって丸分かりですよね? 肖像権の侵害、名誉毀損……あとは、会社経営してた頃の顧問弁護士も懇意にしてるし、もちろん知り合いに士業の人は沢山いるから、開示請求の相談をしてみようかな。  あと俺は人脈も多いから、同じような業界では転職も厳しくなるかもしれないね。あ、それに、若くして成功した起業家とか、若い役職者クラスと結婚したい女性だったら婚活も厳しいかも?」 「そんな……」 こうやって三木谷に対して宣戦布告している自分も、三木谷が美月に「なんなら奪っちゃおうかなぁ?」と宣戦布告まがいのことをした時とやってることは同じだ。 でも、俺の根底に流れているのは「美月を幸せにしたい」というだ。 コイツと同類ではないと思いたい。 「三木谷さん、もし今回の投稿の件で何か分かったことがあったら、いつでも連絡してくれる? 俺は美月のためなら徹底的にやるからさ。じゃあ、俺はこれで帰るね」 「は、はい。ありがとうございました……」 この後、三木谷果林がどう動くかは分からないが、恐らくSNSの投稿はすぐに消すだろう。 深く考えて投稿しているようで、全く頭を使っていない。俺を敵に回すことの怖さを、彼女は分かっていなかった。 「今日は長い1日だったな。さて、マスターの所で飲み直すか。あれ、美月と亮から連絡きてるな……」 美月の連絡を確認すると、『SNSの件が落ち着くまで、前職でお世話になった南さんのお家に泊まりたいと思います。土曜には戻ります』と書いてあり、俺はショックを受けていた。
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