守りたいもの 〜side拓〜

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確かに今の状況で俺と美月が一緒にいると、もし誰かに見られたりでもすれば、デマに尾ひれがついて収束が遅くなるかもしれない。 今は一緒にいない方が良いのだろう。 亮の連絡を見ると『SNSの件、美月から聞いた。兄さんとちゃんと話したいんだけど、今どこにいんの?』と連絡が来ていた。 亮と美月はまた2人で会っていたのか? そう思うと、焦りが湧き上がってきた。 『分かった。今Bar三日月に行く所だから、そこでもいいか?』と連絡すると、『OK』と返ってきた。 俺は亮ともしっかり向き合う覚悟をして、バーに向かった。 *** Bar三日月に着くと、まだ亮はいなかった。 マスターにはいつものカクテルをお願いして、先に飲み始める。やっぱりここのお酒は最高だ。 一人で飲んでいると、亮が現れた。以前、亮をここに連れてきたことがあり、その後も一人でよく来ていると言っていた。 「珍しく、兄弟揃いましたね」 「二人揃ってここに来るのは、随分久しぶりだな」 「そうだね、兄さんは相変わらずジンリッキーから行くんだね」 「あぁ、そうだな。亮は何にするんだ?」 「うーん、俺はジントニックにしようかな」 「兄弟揃って似たようなの飲むよな」 「まぁね」 そう言って、亮と乾杯した。 「亮さ、俺に対してもちょっと雑になってきたな。良い意味で」 「そう?」 「前は尊敬とか、遠慮とか感じてたけど、遠慮が無くなってきたというか……。でもその方が俺は好きだよ」 「ハハ、ありがとう。俺にとって兄さんは完璧な存在だとずっと思ってきたけど、意外と弱い所もあるって分かって、人間味が増した」 「なんだよ、俺サイボーグじゃないぞ?」
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