守りたいもの 〜side拓〜

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「はっ!!? どういう…? え、俺と三木谷果林がデキてると思ったのか??」 「そういうこと!」 亮はバーで大笑いするのを堪えているのか、先ほどから肩を震わせて笑いを堪えている。 「兄さん、信用されてないんだな。フッ……本当、面白過ぎる……ハハッ!」 「亮、俺は今、もの凄くショックを受けている……」 「美月も思考が飛躍し過ぎだよな。自分で言って、青ざめてたけど。何があったのかちゃんと話したら?」 「それはもちろんだ。別にやましいことは何も無いし、俺は美月しか見えてない」 「おーおー、溺愛してますなぁ。さて、話も済んだし、そろそろ帰るかな」 「そうだな。俺も朝から晩まで疲れたわ。亮、今日はありがとうな」 そう言って、バーを後にしようとした。帰り際、マスターの仁さんに声をかける。 「マスター、もし明日か明後日、美月が一人でここに来ることがあれば、俺に連絡もらえたりしないかな?」 「はい、大丈夫ですよ。連絡しますね」 美月もこのバーが気に入っていたし、もしかしたら一人で来るかもしれない。念のため、お願いしておいた。 *** ……という感じで、丸2日、美月とまともにしゃべっていない。それもあと1日頑張ればいいのだが、その1日さえも、ものすごく長く感じそうだ。 「今まで一人でも全く問題無かったんだけどな……こんなことは初めてだな」 ふぅ、とため息をつく。 起業した時はただただ夢中で、どんどん規模を大きくしていって。途中から「ついてきてくれる社員を、路頭に迷わせる訳にいかない」と、死に物狂いで走っていた。 でも、会社と言うのは最悪手放そうと思えば、手放せるものでもあった。 今では「誰か一人を守りたい」と、思うようになるなんて……。 「美月の代わりはきかないんだよな」 ふとそう思った時、俺は美月にどんなプロポーズをするのが良いか、調べ始めていた。 ***
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