いつも2人で

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いつも2人で

(突然、Bar三日月に来ちゃったけど、金曜夜で座れるかな……) 混雑を心配しながら、恐る恐るドアを開ける。 「こんばんは。一人ですが、入れますか?」 「美月さん、いらっしゃい。どうぞ、宜しければこちらのカウンターで」 案内されたカウンター席に腰を下ろす。 「美月さん、バッグお預かりしましょうか?」 「あ、すみません。ちょっと大荷物で来ちゃって……お願いしても良いですか?」 そう言って、マスターの仁さんに洋服や化粧品の入ったバッグを渡した。 「仁さん、今日も冒険したいんですけど、お任せでお願いしても良いですか?」 「はい、もちろんですよ。甘いものがお好きだと思うんですけど、いつもと違う感じのものでもありですか?」 「はい! 甘くなくて辛いものでも大丈夫です!」 「分かりました」 仁さんの無駄のない動きをジッと見てしまう。私の視線に気付いたのか、ふふと笑みをこぼした。 「あ、すみません。ついジッと見てしまって……仁さんの無駄のない動きが見てて気持ち良いというか、ずっと見ていられます」 「ありがとうございます。ちょっと照れちゃいますね……では、一杯目はこちら、ダイキリでございます」 「ダイキリ?」 「ラムベースのカクテルでして、ホワイトラム、ライムジュース、シュガーだけで作るとてもシンプルなカクテルです。  さっぱりとした味わいの中に、ほのかに甘みを感じられますよ」 「そうなんですね。では早速、いただきます」 初めて飲むダイキリを、ゆっくり口の中に流し込む。
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