いつも2人で

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仁さんが言う通りさっぱりとした味わいで、でもアルコールもしっかり入っていて、とても飲みごたえがある。 「ちなみに、ダイキリのカクテル言葉は『希望』なんですよ」 「カクテル言葉ですか? なんだか花言葉みたいですね。へ〜ダイキリは希望なんだ」 「はい、美月さんのこれからが、希望に溢れたものになりますように。そんな願いも込めてみました」 仁さんがニコッと微笑む。特に何があったかは言っていないが、少し落ち込んでいるように見えたのだろうか。 根掘り葉掘り聞くこともなく、でもこうしたちょっとした気遣いが温かくて嬉しい。 「なんだか前向きな気持ちになれますね」 「そう思って頂けるなら、良かったです。ちなみに過去にお出ししたものは、確か……」 「ミモザと、エンジェル・キッスです!」 「あぁ、そうでしたね。確か、ミモザのカクテル言葉は『真心』で、エンジェル・キッスのカクテル言葉は……『あなたに見惚れて」ですね」 「へぇ、そうなんですね」 「たまたまお出ししたので、理由は後づけになってしまいますが……初めて当店で飲む一杯と言うことで、“真心“を込めてお出ししていると言えますね。2回目のエンジェル・キッスは……なんだか松本さんの気持ちを代弁しているようです」 「拓さんの気持ち?」 「えぇ」と言いながら、仁さんは優しく微笑む。 「松本さん、ここで美月さんとお酒を飲む時は、ずっと美月さんに見惚れていますから」 そんなことを言われて、顔がぶあっと熱くなる。カウンター越しの仁さんからは、そのように見えていたのか……。 「お、噂をすれば」 「え?」
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