いつも2人で

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仁さんの視線の先を追ってドアの方に目を向けると、そこには拓さんが立っていた。 (拓さんだ……!) 久しぶりに会う拓さんを前に、ドクドクと鼓動が早まってきた。会えて嬉しい気持ちと、果林ちゃんとはどうなったのか分からない不安が入り混じる。 「美月、やっと会えた」 「拓さん……」 「ごめん、色々不安にさせたとも思うから、一旦話をしようか」 そう言って、私の隣の席に腰を下ろす。「マスター、いつもので」とジンリッキーをオーダーしていた。 「仁さん、二杯目もお任せで良いですか? カクテル言葉で、今の私に合いそうなやつが良いです」 「カクテル言葉か……。美月の二杯目は俺が選んでも良い?」 「拓さんが選んでくれるの?」 「あぁ、カクテル言葉調べるから、ちょっと待ってて。というか、美月はマスターのこと、いつから“仁さん“って呼ぶようになったの?」 「え、今日から、なんとなく……」 ムスッとした顔の拓さん。あ、絶対ヤキモチ妬いてるやつだ。 フッ、とマスターの仁さんも笑っている。 「松本さんにヤキモチ妬かれると、怖いなぁ」 「いや、すまない、無意識だった」 「拓さん、仁さんにまでヤキモチ妬かなくても……」 「あ、これにしよう。マスター、サイドカーで」 「分かりました」 拓さんに話したいこと、聞きたいことは山ほどあるけれど、まずは乾杯してからが良いかなと思い、仁さんの手捌きを眺めていた。 ふと、拓さんの視線は仁さんではなく、私に向けられていることに気付く。 それを見た仁さんが、微笑みながら私に話しかけた。 「美月さん、私が言った通りでしょう?」 「はい、本当ですね。ふふ」
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