いつも2人で

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「なに? 二人で内緒話? これ以上妬かせないでくれ……」 「あはは、秘密です〜」 ムスッとした拓さんに、つい笑みが溢れてしまう。相変わらず表情がコロコロ変わるのだから、面白い。 「では、松本さんにはいつも通りジンリッキーを。美月さんには、松本さんが選んだサイドカーです」 「わぁ、これはどんなお酒ですか?」 「ブランデーをベースにした、比較的辛口なカクテルです。ホワイトキュラソーとレモンジュースが入っているので、爽やかでフルーティーな味わいを楽しめますよ。  カクテル言葉は、松本さんから聞いてください。それでは、私はあちらのお客様の対応をしますので」 そう言って仁さんが別のお客さんの対応を始めた。 「拓さん、サイドカーのカクテル言葉は?」 「サイドカーのカクテル言葉は……『いつも二人で』らしい」 「いつも二人で?」 「あぁ、これからもずっと、美月と二人で生きていきたい。そう思ってる」 「それって……」 「美月、結婚しよう」 突然のプロポーズに驚いて、言葉を失ってしまう。 週末に草津で予告はされていたけど、まさかこんなに早くプロポーズされると思っていなかった。 それまで果林ちゃんや亮さんとの件がどうなったのか気になっていたけれど、全て吹っ飛んでしまった。 「美月、返事は?」 「……はい、もちろんです」 いつの間にか、ぼろぼろ泣きながら返事をしていた。 ここ二、三日すれ違っていたのに、突然のプロポーズで。相変わらず拓さんは「こう」と決めたらグイグイ進める。 でも、それが嫌だったことはない。むしろ、真っ直ぐな想いを向けられて嬉しいと思ってしまう。
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