いつも2人で

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「良かった……」 とても緊張していたようで、ホッと胸を撫で下ろす拓さん。そして嬉しそうに顔を綻ばせた。 「実は、一昨日亮とここに来た時、マスターに頼んでおいたんだ。美月がもしここに一人で来ることがあれば、連絡して欲しいって」 「え、そうだったんですか? だから今日来てくれたの……?」 「そう。迎えに行って、1秒でも早く美月に会いたかった」 マスターと裏で連携していたなんて……。どこまでも用意周到な人だ。急遽南さんの家に泊まりに行ったことが、だんだん申し訳なくなってきた。 「土曜日に帰ってきたら、そのままホテルに連れて行こうと思って予約してたんだ。ホテル・ザ・クラウンのスイートルーム。明日から一泊二日しよう」 「えぇ!? あそこ高級ホテルじゃないですか……緊張しちゃうな」 「会えなかった分、美月を二日間独り占めしようと思って」 「会えなかったのって、3日間くらいなのに?」 「そう。本当、この短期間で『美月ロス』になった自分にびっくりだよ。美月は寂しくなかった?」 「……寂しかったし、会いたかったですよ」 それを聞いて、拓さんはニコニコしている。私の言葉で一喜一憂してしまうようだ。 「あの、拓さん。本当にごめんなさい。まずはきちんと謝りたくて。拓さんの気持ちも、亮さんの気持ちも配慮出来てなかったし、果林ちゃんにももっと早く言えば良かった。  特に果林ちゃんの件は、もっと早く言っていれば、こんなことにならなかったかもしれない……」 拓さんはいつも通り、優しく「うんうん」と頷きながら聞いてくれている。 「……三木谷果林は、早く言ったとしても何かしら邪魔されてたと思うよ」 「それで、果林ちゃんと面と向かって話そうと思ったんですけど、一向に連絡がつかなくて」 「あー、それは多分、俺のせいだな。三木谷の件と亮の件が気になってるだろうから、今話しちゃおうか」 「はい、お願いします」 そう言って、果林ちゃんとオフィスを出た後に何を話していたのか、そしてなぜSNSの投稿がすぐに消えたのか、拓さんは細かく教えてくれた。 私の不安が一切残らないよう、何でも質問してくれと言ってくれた。 果林ちゃんと会った後に亮さんとこのバーで会って、お互いに思っていることも話したそうだ。
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