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「いつも同じような服装だからですかね、田沼さんからは
『向原さんって、なんかこう、服装のセンスが無いというか……残念なのよね。今度一緒に洋服買いに行きましょう。私がコーディネートしてあげるわ』
って言われました」
「はぁぁ!?」
「あ、もちろん、自分の服は自腹ですよ。本当、自分のファッションセンスに自信があるんでしょうね。あはは」
「向原さん、私だったらもう耐えられないわ……結構メンタル強いよね?」
「うーん、真に受けても何も良いことがないので、受け流してるだけですよ。多分それも気に食わない要因のひとつだと思うんですけど」
淡々と話しながら、刺身の盛り合わせに手を伸ばす。
今の所、美味しいものを食べて、南さんとガス抜きすればなんとか発散はできている。
でもこの感情のダムがいつ決壊してしまうのかは、もう時間の問題だなと薄々感じていた。
「その買い物は行くの?」
「うーん、営業の帰りに連れて行かれたら、行くしかないかもしれないですね。流石に休日までは会いたくないので、行かない方向で逃げ切りたいです」
「そうだよね……あ、でも田沼さん、今後うちの会社で生き残るの結構厳しいかもしれない」
「え、それってどういうことですか?」
「役員が話してるの、たまたま耳に挟んじゃったんだけど……」
どういうことだろう、田沼さんが生き残れないなら私はどうなるのかと頭をよぎった。
南さんが声を顰めて話し始める。
「うちの会社、アドプランホールディングスに買収される方向で動いてるみたい」
「えぇ!!?」
「シーッ!」
「あ、すみません、凄く驚いちゃって……」
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