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「確かに、田沼さんは転職することになりそうですね」
「そうそう。あ、あと、来週からアドプランの人が出向でうちの会社に来るらしい」
「南さんの情報網、本当侮れない……どんな人が来るんでしょうかね?」
「うーん、どうだろう。まぁ、月曜日のお楽しみだね」
(いや、まさかね? 拓さんはIT人材派遣系じゃなくて広告事業部だし、今回は関係ないよね)
一瞬、拓さんの顔が頭をよぎったが、もう私はナナではない。
この日も南さんと喋り倒して、あっという間に夜がふけていった。
***
週が明け、月曜日になった。
出社すると、全員フロアに集まるよう声がかかる。南さんが言っていた、出向者の紹介があるのだろう。
一体誰が来るのかな……と待機していると、思わぬ人物の登場に目を疑った。
(嘘、拓さんがいる……)
隣に立っている田沼さんはかなりの面食いなので、朝からテンションがぶち上がっている。きっと買収の件は知らないんだろうな。
「すごいイケメンじゃない! あとでちゃんと挨拶しに行かなきゃ。ね、桜井さん後で一緒に行きましょう!」
「はい、ぜひ。楽しみですね」
(うわぁぁ、拓さんに関わると田沼さんに目をつけられそう……。それに銀座の時はメイクばっちりだし、今の私にはきっと気づかないよね? そもそも向こうは覚えてすらいないかも)
そんな風に考えていたら、一瞬、前に立つ拓さんと目が合ったような気がした。
でもすぐ目を逸らされたので、きっとたまたまだったのだろう。役員が簡単に拓さんについて紹介し、拓さんが自己紹介を始めた。
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