俺様課長、現る

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俺様課長、現る

私たちは今、オフィス近くのレストランのテラス席で向かい合って座っている。ランチのパスタが出てくるのを待っているところだ。 この5日間、松本さんは全社員との1on1を実施していた。その合間にミーティングもあったりして、とても忙しそうだ。 ただ、ランチの時間まで1on1を入れているケースはないので、なんとなく、仕事以外の話もあるんじゃないかと思い始めた。 (何を言われても、しらばっくれることにしよう) セットのサラダと一緒に、松本さんには明太子のパスタ、私にはカルボナーラが運ばれてくる。 「食べながら話そう」ということで、熱々のうちに食べ始める。最初に口火を切ったのは、松本さんの方だった。 「向原さん、今日呼ばれた理由、なんとなく気付いてる?」 「そうですね、松本さんがこちらに出向されてまだ1週間くらいですし……業務のことで確認かなと思ってました」 「それもそうなんだけど、それだけじゃないんだよね」 (うわぁ…嫌な予感……) 「今日は何て呼べばいいのかな? 向原さん?それとも、“ナナ“の方かな?」 「えーっと、ナナとは誰のことでしょうか?」 「ふーん、しらばっくれるのか」 「何のことでしょうか?」と言いながら、内心はだらだらと冷や汗をかきながら無理やり笑顔を作る。 (うちの会社は副業禁止だし、ましてや水商売だからバレては色々と困る。何か脅されるんだろうか……) 「君と出会った後、もう一度(れん)に行ったんだ。そこでママから、君が派遣のホステスであることを聞いたよ。この会社にいて本当に驚いた」 「……」
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