6670人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
俺様課長、現る
私たちは今、オフィス近くのレストランのテラス席で向かい合って座っている。ランチのパスタが出てくるのを待っているところだ。
この5日間、松本さんは全社員との1on1を実施していた。その合間にミーティングもあったりして、とても忙しそうだ。
ただ、ランチの時間まで1on1を入れているケースはないので、なんとなく、仕事以外の話もあるんじゃないかと思い始めた。
(何を言われても、しらばっくれることにしよう)
セットのサラダと一緒に、松本さんには明太子のパスタ、私にはカルボナーラが運ばれてくる。
「食べながら話そう」ということで、熱々のうちに食べ始める。最初に口火を切ったのは、松本さんの方だった。
「向原さん、今日呼ばれた理由、なんとなく気付いてる?」
「そうですね、松本さんがこちらに出向されてまだ1週間くらいですし……業務のことで確認かなと思ってました」
「それもそうなんだけど、それだけじゃないんだよね」
(うわぁ…嫌な予感……)
「今日は何て呼べばいいのかな? 向原さん?それとも、“ナナ“の方かな?」
「えーっと、ナナとは誰のことでしょうか?」
「ふーん、しらばっくれるのか」
「何のことでしょうか?」と言いながら、内心はだらだらと冷や汗をかきながら無理やり笑顔を作る。
(うちの会社は副業禁止だし、ましてや水商売だからバレては色々と困る。何か脅されるんだろうか……)
「君と出会った後、もう一度恋に行ったんだ。そこでママから、君が派遣のホステスであることを聞いたよ。この会社にいて本当に驚いた」
「……」
最初のコメントを投稿しよう!