俺様課長、現る

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「俺は純粋に、君の“素“の部分にも興味を持ったんだよね」 「そう、なんですね。でも、“素“の私は松本さんが思っているような人間では無いと思いますよ?」 「……とにかく、もう遠慮せずにいかせてもらうよ」 「ふぇ!?」 そう言って松本さんは私の空いた手を取り、真剣な眼差しをこちらに向けてきた。 でも、ここはオフィスからも近い場所にあって誰が見ているか分からない。私はパッと手を離した。 「すみません、ここじゃ誰が見てるか分からないので」 「あぁ、すまない」 2人の間に沈黙が流れる。 私の“素“は、夜中でも一人で牛丼屋に行くような女なのだ。“銀座のホステス“からは程遠い。 それに他の部分も、松本さんに受け入れてもらえるかどうか分からない。 「それで、どこまでが本当なんだ?」 「どういうことですか?」 「ナナは源氏名で、本名は美月。誕生日が7月7日と言うのも嘘?」 「いえ、それは本当です。だから源氏名をナナにしました」 「じゃあ、週末1人で過ごすことが多いというのは?」 「え?」 「…だから、彼氏がいるかどうかは?」 「あ、いえ、いません。最近はずっと忙しくて、出会いの場にも行ってないですし」 「そうか」 松本さんはホッとしたような顔をしている。松本さんの言動や表情、一つひとつに翻弄されてしまいそうだ。でも、期待しちゃダメだ。 「そうだ、あと、LIMEで連絡くれなかった理由は?」 「あれは…派遣ホステスは名刺を毎回お店に提出する必要があって、持って帰れないんですよ。毎回行くクラブも違いますしね」 「そういうことか。嫌われていた訳ではなかったんだな」 「そんな!嫌うだなんて…そんなこと有り得ないですよ」 「そうか?」
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