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「お二人とも、最初はビールにしますか?」
「あぁ、向原さんもビールで大丈夫?」
「はい、ぜひ」
そう言って、キンキンに冷えたグラスにビールが注がれた。早速松本さんとグラスを寄せ合う。
「「乾杯」」
いつもの安い居酒屋で飲んでいるものより、何倍も美味しい。それに明日は土曜日だ。次の日を気にせず飲めるお酒ほど、美味しいものはない。
前菜には、冷製茶碗蒸しが出てきた。口に含むとふわっととろけて、あっという間に消えてしまった。
「んん〜!美味しい! 前菜がこんなに美味しいなんて……」
「はは、喜んでもらえて良かった。連れてきた甲斐があるな。ここはどれも美味しいから楽しみにしてて」
その後も、釜揚げしらすのサラダや刺身盛りが運ばれてきた。漁港直送の魚は、どれも身がしっかり引き締まっていて食べ応えがある。
魚に合わせて、日本酒もおすすめのものを頂いた。
「松本さん、私、もう胃袋が掴まれそうなんですけど、チョロい女ですかね…?」
「あはは、まぁ俺は口説いてる訳だからね。掴まってくれたら御の字。あと、拓って呼んでって言ったと思うけど?」
「あ、えーと、拓さん?」
「そうそう。あ、美月、この日本酒飲む?」
(さらっと名前で呼んでる…!! やっぱり女の扱いに慣れた遊び人?)
「は、はい、飲みます」と狼狽えていると、察した女将さんが「ふふ」と笑いながら話しかけてきた。
「松本さんのお連れさんのお名前、伺っても宜しいですか?」
「はい、向原美月と言います」
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