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拓さん行きつけのバーは、これまた隠れ家のような裏通りにひっそりと佇むバーだった。
その名も「Bar三日月」
店内に入ると、とても落ち着いた雰囲気で心地良い。マスターが拓さんに気付き、「松本さん、いらっしゃい」と出迎えてくれた。
案内されたカウンター席に二人で座ると、ここでも「松本さんがここに女性を連れてきたのは、初めてですね」と言われていた。
逆に、全く女性の影がないのも不思議だ。
「拓さん、実は女嫌いなんですか?」
「プッ なんでそうなったんだ?」
「だって、さっきの小料理屋さんでも同じこと言われていたし……」
「大事なお店ほど、誰彼構わず教えるなんてできないんだよ。前に行きつけのお店を教えたら、何回も女性に待ち伏せされてたことがあって、もうそのお店も行きづらくなったりしてさ」
「あー、そんなことがあったんですね。やっぱりモテる男は違うなぁ」
一人感心していると、マスターが声をかけてくれた。
「お連れ様のお名前は?」
「向原美月です」
「美月さんですね。最初の一杯は何にされますか?」
「そうですね……私バーってあんまり行ったことがなくて、マスターのおすすめでも良いですか?」
「はい、もちろんです。松本さんはいつもので良いですか?」
「あぁ、それで頼む」
マスターが早速カクテルを作り始める。手際良く作る様子をぼーっと眺めていた。
目の前にスッとオレンジ色のカクテルが出された。
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