俺様課長と、デート①

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「それくらいのことで引いたりしないよ。むしろ一人で飲食店に入れないより好ましく思うし、俺だって疲れて何もしたくない日はある。完璧な人間なんていないさ」 (おぉ……逆にポイントが上がるとは思ってなかった…) 「美月が何が好きなのかとか、大事にしていることとか、もっと色々知りたい。良ければ俺のことも、もっと知って欲しい」 真剣な眼差しがこちらに向けられ、お互いの視線がぶつかる。 私の髪をさらりと、拓さんの長い指が絡め取った。 優しく髪を()くように触っているけれど、視線はまるで「逃がさない」とでも言っているかのようで。 心臓の音がドクンドクンと高鳴って、耳の真横から聞こえてきそうだった。拓さんの指先と息遣いが近くに感じられて、今にものぼせてしまいそう……。 止まった時を動かしたのは、拓さんの方だった。 「俺のこと、嫌い?」 「いえ、嫌いではないです」 「じゃあ、彼女になってくれるって聞いたら?」 「それは、まだ出会って間もないので……もう少しお互いを知る時間が欲しいです」 「そうか…」 そんなことを言っているが、本当は自分に自信が無いだけなのだ。何も考えずに、拓さんの胸に飛び込んでいけたら良いのに。 これまでの会話を反芻してぼーっとしてしまい、二杯目に何を飲んだのか、拓さんと何を話したのかも記憶が朧げだった。 お会計を済ませお店を出て、二人で歩き出した時だ。 「美月」 「はい」
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