俺様課長と、デート①

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反射的に振り返った時だった。拓さんの唇が重なって、シトラスの香りにふわっと包まれた。 身長差があるので、屈むようにキスをされていた。ちゅ、と触れるような一瞬の出来事なのに、突然のことに驚いて固まってしまう。 「美月、好きだ」 拓さんははっきりと、言葉にして伝えてくれた。 「返事は急がない。時間がかかることも織り込み済みだ。出会った場所が場所なだけに、踏み止まる気持ちも分かる。でも、もしチャンスがあるなら、また二人で会って欲しい」 こくりと、無言で頷く。今の私にはそれが精一杯だった。 「今日は自宅まで送るから、ゆっくり休んで。次は休日にデートでも行こう。また連絡する」 すぐにタクシーを捕まえて、車に乗せてくれる。先に私が降りて、その後拓さんは自宅に帰っていった。 *** 土日は自宅の掃除をしたり、食材の買い出しに出かけたりして過ごした。 お茶を飲んで一息ついていると、つい拓さんと過ごしたランチタイムや夜のデートのことを思い出してしまう。 表情がころころ変わったり、女将さんの言葉に顔を真っ赤にしてタジタジになっていたり、突然キスしてきたり……。 スマホを開いて、「ホステス 付き合う」なんて検索してしまっている自分がいる。 世の中にはホステスと知り合って、付き合ったり結婚したりするカップルはどれくらいいるんだろう? と気になってしまった。 有りか無しかで言えば、無しが70%なんていうアンケート結果もあった。
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