砂の中でもがくような

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「向原さん、今日は何飲む?」 「たこ焼きなので、ハイボールにします! 南さんはどうします?」 「そうしたら私もハイボールにしようかな、あ、すみませーん!ハイボール2つお願いします!」 今日はUIUXデザイナーの南さんと、仕事終わりに居酒屋にやってきた。たこ焼きとハイボールがメインの、立ち飲み居酒屋だ。 南さんとは年が近く、何でも話せる貴重な存在で、田沼さんとの間で起こった出来事もよく「ガス抜き」させてもらっている。 「「かんぱーい!」」 キンキンに冷えたハイボールで喉を潤す。仕事終わりのお酒が美味しい、と思うようになったのはいつからだろう。 20歳になって初めて飲んだお酒は美味しいと思えなくて、なぜ大人はこれを飲むのか不思議だったのに。 今となっては営業で取引先とお酒を飲む機会も多く、どんどんお酒への耐性が強くなっていた。 「南さん、まだ今日水曜日ですね…」 「本当、それなのに居酒屋に繰り出す私達って……まぁ今日はサクッと飲んで帰りましょう」 「そうですね…あ、そうだ『本日の田沼さん』聞いてくださいよ!」 「え、なになに!? あのモンスター次は何を言い出したの?」 「はは、モンスターって」 「で、何があったの?」 ハイボールを片手に、ずいっと身を乗り出すようにした南さん。 「もう全然業務と関係なくて、『向原さん、私のインスト、いいねしてくれた?』って突然言われたんです」 「うわぁ……しかも、見てくれた?じゃなくて、いいねしてくれた?なんだ」 「そうなんですよ。なんでも最近テレビでも話題になったベーカリーに行ったらしくて。その投稿をしたと"取り巻き"の桜井さんと盛り上がってて」 「うんうん、桜井さんは田沼さんの全てに『YES』しか言わないよね」
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