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そう言ってワインをポンッと開ける。改めて乾杯して、今日の感想を言い合いながら、ピザやサイドメニューのポテトもあっという間に平らげた。
一息ついて、『今日は本当に楽しかったな…』と思い返していた。
拓さんの笑顔や、自分らしくいられたこと。
もう何も憂うことはない。
拓さんに今の気持ちをきちんと伝えようと、意を決した。
「拓さん、今思ってること聞いてもらえますか?」
「あぁ、もしかして、この間の返事?」
「はい、それもあります。私、銀座で拓さんに初めて会った時、一目惚れしたんです」
「え、じゃあ美月もだったの?」
「はい、でも私はその時ホステスですし、その後連絡する手段もないので、すぐに気持ちに蓋をしました」
うんうん、と頷きながら拓さんは聞いてくれている。
「再会して俺の気持ちも伝えたと思うけど、躊躇った理由は? 何が美月の憂いの原因か、気になってたんだ」
「最近自分に自信を失うことが多くて……仕事や今後のキャリアもそうですけど、ホステスをやってると常に比較の目にさらされているような感じで。
年齢とか自分の体型とか、お店から指名を受けてないこととか……見えない評価に自分で首を締めている感じですかね。拓さんに幻滅されたら、立ち直れないなと」
「そうだったのか……」
拓さんが私を抱き寄せて、頭を撫でてくれた。
この前キスされた時より、シトラスの香りを強く感じる。拓さんの体に自分の体を預けると、自分の心を覆っていた黒いもやが少しずつ消えていくような気がした。
改めて拓さんの方に顔を向けて、先ほどの続きを話し始めた。
「……でも、自分に自信がないことで、拓さんの気持ちを蔑ろにしている感じがすごく嫌で」
「自信がないというか、美月は沢山傷ついていたんだと思うよ」
「え?」
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