ナナと美月 〜side拓〜

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ナナと美月 〜side拓〜

"ナナ"と出会った日、あの日に初めて銀座の高級クラブに行った。 俺を無理矢理クラブに連れて行ったのは、アドプランホールディングスの今井社長、そして今井社長と懇意にしている俺の父だった。 以前、知り合いの女性に付き纏われたり、待ち伏せされたりと、面倒なことが続いてほとほと困っていた。 『女性は面倒だ』 そう思い、俺は仕事だけに邁進していた。 それに見かねた父親が、どうにか女性に興味を持つよう仕向けたかったんだろう。今井社長を巻き込んで、夜の街に連れ回された。 「拓くん、今日行くのはクラブ(れん)という所で、私の行きつけの場所なんだ。ママも良い人だし、君も気にいると思うよ」 「社会勉強と思って行かせて頂きますね」 「はは、相変わらず君は真面目だなぁ」 何も期待していない。女性はもう懲り懲りだ。 ーーカランカラン 「「「いらっしゃいませ」」」 煌びやかなドレスに身を包んだ女性達が、自分達を出迎える。『やっぱりこういう感じは苦手だな…』と思いながら案内された席に向かうと、ナナに出迎えられた。 一目見て「小柄だけど、綺麗な人だな」と思った。 実際に話してみると、よく広告業界のことも勉強しているとすぐに分かった。聞き上手ではあるが、ただ聞いているだけでは無くて自分の意見も持っている。 これまで自分に近寄ってくる女性は、俺の仕事や俺自身に関心があるというより、顔・スペック・社会的なステータスに関心がある人が多かった。 彼女からは変に何かを期待されたり、求められることもない。 いつの間にか『ただ一緒にいるだけで、落ち着くな…』と心地良く感じ始めていた。
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