ナナと美月 〜side拓〜

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ドレスを脱いだ「素」の君は、一体どんな人なんだろう。……でも、向こうは仕事だ。客とどうこうなるとは考えてもいないだろう。 それでも最後に悪あがきをしてしまった俺は、自分の行動に驚いた。 「これ、LIMEのID、良かったら連絡ちょうだい。転職の相談も乗るよ」 「……ありがとうございます! 転職の相談、ぜひさせてください!」 少しでも繋がりを残しておきたくて、プライベートの連絡先を渡した。連絡をくれると良いのだが……。その後、1週間、2週間と経ったが一向に連絡は来なかった。 *** 彼女のことが気になって、1ヶ月も経たずに1人で(れん)に来てしまった。 今回は1人だったので、グループ席ではなくカウンターに通してもらった。早速、千夏ママにナナがいるかどうか確認する。 「今日は元々シフトにはいないんだけど、来られるか確認してみますね」 と言って、確認しに行ってくれた。 これは本人に連絡しているのではなく、派遣会社に電話しているということを後から知るのだがーー。 「松本さん、ごめんなさいね。ナナさん、実は派遣のホステスさんなんだけど、派遣自体もちょうど最近辞めてしまったみたいで……。ここで会うのはもう難しそうだわ。  他の子でも良い子がいるのだけど、どうかしら?」 「そうだったんですね、ホステスでも派遣とかあるんですね……。分かりました、少し飲んだら今日は帰ります」 別に他の女性と話したかった訳ではない。ナナに会いたくて来たのだから、いないと分かれば早めに撤退だ。 ナナは源氏名で、本名ではない可能性が高い。本名が分からなければ調べるのはかなり難しそうだ。
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