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週明け、ランチを終えてオフィスに戻ると、雰囲気が少しおかしかった。
「向原さん、最近新規で受注出来てるのは良いんだけど、この企画書はちょっと酷いんじゃない?」
「すみません、具体的にどこを直せば宜しいでしょうか?」
「そんなことも全部一から教えないと分からないの? あなたもう新卒一年目じゃないでしょ、自分で考えなさいよ」
「分かりました……」
エンジニアが多く作業に集中している者が多い中、シンとしたオフィスで田沼さんの声が響き渡っている。
何もこんなに社員が大勢いる前で言うことじゃない。わざわざ人目に晒すように吊し上げるなんて、上司としては褒められたものではない。
そして誰もフォローしない。見てみぬフリだ。
俺は田沼さんを刺激しない程度に、声をかける。
「田沼さん、この後の1on1なんですけど、少し早めに始めたり出来ますか? 夕方、別件で一度外に行く用事が出来てしまって」
「はい、大丈夫です。A会議室の予約時間、変更しておきますね」
「あぁ、ありがとうございます。私もすぐ行きますね」
ちらりと美月の方を見ると、元気は無いが早速資料の修正に取り掛かっていた。田沼さんも修正の指摘はするものの、具体的な箇所を教えないとは……。
A会議室に行くと、早速田沼さんも入ってきた。
直近の業務状況を確認すると、営業数値管理表を見せてくれた。各社の広告枠の数、年間売上、社内で誰が担当しているか……報告は簡潔で分かりやすかった。仕事は出来るのだろう。
部下の管理も業務内容なので、どうマネジメントしているのか確認する。すると、不満の声が返ってきた。
「桜井さんは私の意図を理解してスムーズに動いてくれているのですが、向原さんは全然ダメですね。そもそも業務に対してやる気を感じられません」
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