ナナと美月 〜side拓〜

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「先ほどの管理表を見ると、向原さんも直近で新規受注していますが……具体的に、どう言った所がダメなんでしょうか?」 「あの子が化粧をバッチリ決めてる時って、多分夜の仕事か何かしてるんですよ。そもそも本業が完璧に出来ていないのに副業するなんて、まずやるべきことがあるでしょう? と思っちゃいます。  それに、彼女は松本さんにも色目使ってますよね? 男性のことばかり気にして、仕事が疎かになってるんですよ」 「……なるほど、田沼さんの考えは分かりました」 (とにかく全てが気に入らないんだな) 「私もアドプランで管理職なので、これは私個人の考えですが……もし化粧が濃くても、薄くても、結果さえ出していれば私は何も言いません。もちろん服装にマナーや配慮は必要でしょうが。  田沼さんも数字重視だと思うのですが、いかがですか?」 「えぇ、数字が全てだと思いますよ。なので私は、部署内で一番結果を出すように努力しています」 「分かりました。……ちなみに、アドプランと連携することで、業務内容が変わる可能性もありますが、その場合はどうされますか?」 「そうですね……。一番、自分のパフォーマンスが出せる環境に身を置く、と言うのが今の所の答えですね」 「そうですか。諸々参考になりました。次の面談は桜井さんなので、声をかけて頂いても宜しいですか?」 「はい、分かりました。それでは私は失礼します」 長年営業としてやってきた自信か、という点では迷いがなかった。ただ、業務が変わる話になると、歯切れの悪さを感じた。 その後、田沼さんと入れ替わりで、桜井さんが入ってきた。 「すみません、少し前倒しになってしまって」 「いえ、今日は比較的スケジュールに余裕がありますし、大丈夫です。宜しくお願いします」 桜井さんも広告事業部所属ではあるが、第一線で営業すると言うより、数値管理や営業サポート的な役回りの方が多い。 彼女は今のチームに対してどう思っているのだろうか。いつも田沼さんの後ろにくっ付いて歩いている印象が強いが……。
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