ナナと美月 〜side拓〜

8/8
前へ
/165ページ
次へ
美月含め広告事業部全員の面談を終え、水曜日になった。アドプラン社からのメールを確認していると、スマホが点滅した。 美月からの連絡だ。 「帰り少し話したいのですが、お時間ありますか?」 そんなの、何が何でも時間を作るに決まってるじゃないか。 とはいえ少し残業になりそうだ。「少し残っている仕事を片付けてから集合させて欲しい」と返信を入れておいた。 その後、イタリアンバルで美月から提案されたデートプランは面白くて。まだまだ俺の知らない美月が、飛び出してくるんじゃ無いかと楽しみになった。 実際、待ち遠しかったデートも、色んな表情の美月を見れてとても充実していた。美月自身も、自然の中で動物と触れあって、とても開放的な気持ちになっていたと思う。 今なら美月の本心を引き出せそうな気がする。ゆっくり話がしたいと、俺の自宅マンションに誘った。 「……でも、自信がないことで、拓さんの気持ちを蔑ろにしている感じがすごく嫌で」 「自信がないというか、美月は沢山傷ついていたんだと思うよ」 「え?」 「田沼さんには心無いことを言われ続けて、銀座では優劣をつけられて、小さな傷がどんどん重なっていく感じ。だからこれ以上傷つかないように、心にも休みが必要だったんだと思う」 「そっか、私、傷ついてたんだ……」 美月が見ないようにしてきた傷に踏み込むか悩んだが、後で心が爆発してしまうより、少しずつ受け止めていきたいと思った。 沢山泣いて目が赤くなっている美月が愛おしくて、今日は優しく寄り添ってあげたいと思っていた。……はずが、美月から「好き」と言われたのが嬉し過ぎて、俺はスイッチが入ってしまった。 2回イッた後にシャワーを浴びながら愛撫して、その後もひたすら美月の柔らかな体を貪って……。 女性を抱き潰すなんて、初めての経験だった。決して絶倫ではない。でも、美月を前にすると、それも完全に否定できない気がしてきた。 ***
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6590人が本棚に入れています
本棚に追加