体の異変と、上司の怒り

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「あら〜、洗剤とか化粧品が肌に合ってないんじゃないの? お大事にね」 「はい、ありがとうございます」 (洗剤も化粧品も、ここ数年同じブランドのしか使ってないんだけどな……) ここ最近は、たまに拓さんと電話をしながら、残業続きの日々を乗り越えていた。拓さんには心配をかけたくなくて、突然涙が出ることや手首の症状は伝えずにいた。 自分の体に異変が起き始めてから1週間後、とうとう事件は起きた。 ある日の夜、ほとんどの社員が帰宅して、たまたま私と田沼さんが残っていた。 窓の戸締りなど先に済ませて、最後の鍵閉めは自分がやればいいと思っていた所に、田沼さんに声をかけられた。 「向原さん、悪いんだけどこの資料、資料室に持って行ってもらえないかしら? 戸締りは私の方でやるから、もうそのまま上がってちょうだい。お疲れ様」 「はい、分かりました。資料室に持っていきますね。お疲れ様でした」 そう言って、渡された資料の段ボールを資料室に運んでいく。久しぶりに入る資料室は、窓もなく、薄暗くて早く帰りたいなと思った。 どこにしまう資料なのか場所を確認していると、ガチャンッと扉が外から閉まる音がした。 「え……ちょっと待って、閉じ込められた?!」 急いでドアの方に向かい、バンバンと叩いて大きな声を出す。 「田沼さん!! 私まだ中にいるんですけど…!!開けてください!!」 廊下からは何も音が返ってこなくて、しんとしている。そして内側から鍵を開けられないという、謎仕様……。 (あー閉じ込められたか……さっきの会話だと、もう資料を置いて帰ったと判断して鍵を閉めたのか、もしくは意図的に閉じ込めたか。意図的な気がしてきたなぁ)
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