体の異変と、上司の怒り

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「なら話は早いな。契約自体はとっくに完了していて、後は社員に説明会をしたりシステムを移行したり……経営統合の段階なんだ。  アドプラン内で異動先はすぐ用意できると思う。異動してもう少し業務の幅を広げれば、他社に年収を上げて転職も可能だろう。それだったらどう?」 「それは凄く有難いですね…!もしそれが本当に可能なら」 拓さんはうんうん、そうだよなと頷いている。 「それと、もし田沼さんを糾弾できるなら、糾弾したい?」 「それは……」 次は私が「うーん…」と考え込んでしまう。 「ボイスレコーダーと、一応社内チャットのスクショも撮ってあるんだよな?」 「はい、そうなんですけど……逆恨みも怖いですし、何より過去の音声とかスクショとか、本当は見るのも耐えられないんですよね。あの時に感じた感情を、わざわざ掘り起こさないといけないのかって。  ……そう考えると、もう全く顔を合わせない場所で仕事できたらそれでいいです。この先、2度と関わりたくない」 「そうか……アドプランでは、彼女が満足する待遇を用意するのは難しいと思ってる。美月が早くアドプランの方に行けるよう、こちらでも動くからな」 「ありがとうございます…憧れの会社ですから、本当に嬉しいです」 「あと、ボイスレコーダーと社内チャットのスクショ、一応俺の方で預かっておいても良いか? それと、明日は一日有給を取ったら良い。ゆっくり休んで」 「分かりました、ボイスレコーダーはこれで……社内チャットのスクショはパソコンに保存してあります。今共有した方が良いですか?」 「あぁ、寝る直前で悪い。早めに確認しておきたいから、今データもらっておいても良い?」 ボイスレコーダーを鞄から取り出して拓さんに渡し、そのまま社用PCも開いてフォルダごと拓さんに転送した。 ベッドに戻ると、拓さんが優しく頭を撫でてくれた。心地良さと疲れもあって、すぐに眠りについてしまった。 ***
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