急展開

5/9
前へ
/165ページ
次へ
美月が眠りについたことを確認してから、預かったボイスレコーダーの音声を確認したり、社内チャットのスクショを確認したりし始めた。 美月は特に糾弾しなくて良いと言っていたが、何もお咎めなしでは俺の気が済まない。 「確かに言い方がキツかったりはするが、決定的な言葉や暴力の証拠がある訳ではないんだよな……『部下に対する指導の一環です』とでも言って有耶無耶にしそうだ。  うつ病の診断書を取りに行くかと言っても、美月は嫌がりそうだし。ましてや裁判まで持っていくなんて、もっと嫌がるよな……。さて、どうするか」 もう夜明けも近づいていたが、寝ている時間もなかった。 「早めに出社して昨日の監視カメラも確認しないと。移動しながら取締役の島田さんには連絡しておくか。  前倒しで買収の件を発表しても良いか、岸社長とアドプラン側の今井社長にも根回ししておいた方が良いよな」 冴えた脳内をフル回転させる。 「あぁ、良いことを思いついた。懲戒解雇はできなくても、俺にはまだ出来ることがあるじゃないか」 ーーその後、簡単な朝ごはんを用意して、美月にスペアキーを渡してから自宅マンションを出発した。それからは頭でシミュレーションしていた通りに動く。 まだ人もまばらのオフィスで、システム部の部長を捕まえて監視カメラをチェックさせてもらった。 そして昨夜分の録画データをもらい、この後使わせてもらうことにした。 取締役の島田さんには朝イチで概要は伝えておいたので、この後のミーティングに同席してもらうことになっている。後は田沼さんを捕まえるだけだ。 この日は田沼さんも、いつもより早めに出社してきた。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6588人が本棚に入れています
本棚に追加