急展開

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美月が閉じ込められた資料室は、使う時くらいしか鍵の開け閉めをしない。彼女は出社して早々に資料室に向かっていた。 俺は跡をつけ、田沼さんが資料室に入っていく様子を見届けた。室内を見て周っているようだ。美月を探しているのかもしれない。 俺はドアの前に立ち、田沼さんに話しかけた。 「田沼さん、向原さんはここにいませんよ?」 ビクッと肩を震わせた。動揺したかと思いきや、何もなかったかのような顔をこちらに向ける。 「あら松本さん、おはようございます! 資料を取りに来たんですけど、向原さんがここに来てたんですか?」 「昨日、あなたが閉じ込めたでしょう? さっき監視カメラを確認したら、あなたが鍵を閉めていましたよ」 「私は向原さんに資料を置いたらすぐに帰るよう伝えましたし、もうとっくに帰っていると思ってましたが。松本さんは、私が彼女を閉じ込めたと?」 「そのように見えてもおかしくは無いでしょうね。取締役の島田さんも来ているので、A会議室に来てもらえますか?」 早速A会議室に向かうと、島田さんが待機していた。 「島田さん、おはようございます。朝からすみません、お呼び立てしてしまって」 「いえ、私は大丈夫ですよ。早速ですけど、昨日向原さんが資料室に閉じ込められていたというのは、本当ですか?」 「ッ……私は閉じ込めていません! 島田さんまでそんなことをおっしゃるんですか? 向原さんに資料を置いたらすぐに帰るよう伝えましたし、もうとっくに帰っていると思ってました。それで戸締りをしただけです!!」 (……このままじゃ話は平行線だろうな。監視カメラのデータを見せても、意味が無さそうだ。企業買収の件をもう話すか)
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