ドレスを脱いだら〜俺様課長に捕まって、もう逃げられない〜

急展開

「田沼さんの言い分は分かりました。午後に社員全員に伝える件を、先にあなたにお伝えしておきますね。この会社は、アドプラン側による企業買収で契約が完了しています。
　これから少しずつ、皆さんには転籍に向けて業務を整理したり、引き継ぎを行なっていただく予定です」

「……え？　業務提携ではなく、買収……？」

「はい。ですので、今とは業務内容が大幅に変わると思ってください。アドプラン社は元々Web広告がメインですし、田沼さんが得意とする領域とはズレがあるかもしれません。
　また、今と同じ役職で転籍できる可能性は低いです。もし弊社へ転籍希望であれば、一から勉強する覚悟で来て下さい」

「そんな……そう、なのですね。分かりました。今後のことは検討させてください」

話は早々に終わり、田沼さんは会議室を後にした。会議室には俺と、取締役の島田さんが残される。

「松本さん、あっさり終わりましたけど、あれで良かったんですか？」

「彼女は恐らくすぐ、転職活動を始めるでしょう。でも、私には広告業界の知り合いがとても多いんですよね。しかも役職者クラスの」

「……ハハ、なるほどなぁ。一番敵に回したくないタイプですね、あなたは」

そう、懲戒解雇にはできなくても、自分の知り合いに「某IT企業出身の、田沼さんには気をつけた方が良い」と話しておくだけで充分だ。

噂が広まれば、役職者から人事部にも話がいくだろう。この手の噂は、広まる時はあっという間に業界内で広まる。

自分のこれまで築いてきた人脈がここで活かされるとはな。

企業買収の発表については、岸社長と今井社長の確認が取れた。全社員への発表は岸社長からしてもらうことにして、今後のスケジュールや方針は俺から発表することになった。