2人の時間 ※

5/5
前へ
/165ページ
次へ
拓さんがきょろきょろと部屋を見ている。と言っても私はあまり物を置くタイプでは無いので、特に見るものも無いのだけど。 「美月も俺と同じで、物を持たないタイプ? あ、この前買ったゾウのぬいぐるみ発見」 「ゾウのぬいぐるみ、可愛いですよね!いつも癒されてます。  それと、あんまり気軽に物を増やさないかもです。床に置いたりも嫌ですし、一つのものを長く使い続けるタイプですね」 「そうか。ん、あれは何? カメラ?」 「あぁ、これですか。はい、一眼レフです。と言っても初心者用のモデルなんですけど。元々旅行が趣味で1人でいろんな所に行ってて、せっかく旅行に行くなら写真も綺麗に撮りたいなって。  最近はスマホの画質が凄く良いので、あんまり使わなくなっちゃいました」 「これまで旅行はどこに行ったの?」 「京都とか広島とか、1人の時は国内中心ですね」 「そうか、牛丼屋だけじゃなくて旅行も1人で行っちゃうんだな」 「ふふ、そう言われるとそうですね。突然銀座の派遣を始めたり、好奇心旺盛なタイプかも」 「美月のことを色々知れて嬉しいよ。今度一緒に旅行も行こう」 「はい、ぜひ。温泉も好きですし、酒蔵見学もしてみたいです」 「あぁ、転籍祝いに行こうな」 拓さんとなら、どこに行くのだって楽しそうだ。 土日はあっという間に過ぎ、月曜日になった。田沼さんに会うのは、閉じ込められた日以来だということを思い出した。 でも、拓さんの支えもあって、もう何も怖くなかった。 ***
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6584人が本棚に入れています
本棚に追加